はじめの言葉   2009年8月号より

                  はじめの言葉

■「何が売りですか」という問いに、「SI(システムインテグレーション)サービスです」と答えるコンピュータメーカーが増えている。最早、ハードウェアメーカーの面影はない。大部分、SI/ソフトウェア/サービス主体の産業になっているのがコンピュータ産業界の今の実状だ。否、コンピュータ産業そのものが業態を変えてしまったふうだと言った方が、より適切かもしれない。
■確かに、費用の内訳から見るとコンピュータシステム全体に占めるハードウェアコストは1〜2割で、残りはSI/ソフトウェア/サービスのコストになっている。まさにハードウェアはコスト的に見ると情報システムの構成要素としては、ホンのオマケ存在になっている。したがって、コンピュータメーカー側の売上高明細から判断すると、ハードウェアは「売り」の対象ではないということになる。
■しかし、これはあくまでもユーザーにとっては全体費用の内訳、メーカーにとっては売上高から判断した話でしかない。やはり、コンピュータハードウェアがあってのSIであり、ソフトウェア活用であり、付随サービスであることを忘れるべきでない。少なくとも、コンピュータ活用の本質を論じる論理ではないということを、改めて確認しておく必要があるのではないだろうか。
■コンピュータハードウェアというと、半導体/ICチップを連想する方が多いと思うが、それはかなり初期のコンピュータハードウェアのイメージが強すぎると考える。昨今の仮想化ブームの中、同じハードウェア上で複数のOSが稼働できることも早合点させる原因のひとつかもしれない。早合点は更なる一人歩きを進め、「ハードウェアは皆同じ」「違うのはOSだけ」と短絡して考えられている可能性もある。
■しかし、実は違う。いわゆるメインフレーム系譜のコンピュータとガレージ産業から産み出されたパソコン系譜のコンピュータとは本質的な部分で大きな差違がある。これを気にしない世界でのコンピュータ活用をするのなら、まったく気にする必要はない。両者の差異を気にするのなら、トコトン気にするべきである。価格的にも実は差異がある。当然にして稼働段階での品質にも大きな差違がある。
■コンピュータ産業はなくなったと考えるコンピュータメーカーには無関係なコンピュータワールドだと言える。安かろう、さらに安かろうで勝負をする、ひたすら値下げ競争の世界で勝負するか、その反対の道を行くかは、コンピュータメーカーの経営トップの考え方次第である。同じLinuxOSおよびその配下のソフトウェアを稼働させるだけでも稼働品質に大差をもたらすコンピュータワールドがあることを忘れるべきでない。
■ユーザー企業にしても同じことが言える。どういう情報処理の世界を実現しようとするかによって選択するコンピュータは異なってくる。コンピュータワールド/世界観のとらえ方がそのまま差異となって現れる。これも当然である。どちらのコンピュータを選択することが正解だとは言い難い。確かなことは、絶対はないということ。ただ、使い手として関与する担当者によって成果に大きな差異が出るだろう。だから面白い。(藤見)

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