はじめの言葉 2009年7月号より
はじめの言葉
■世界のGMが株式市場から姿を消した。様々な見解が飛び交っているが、再上場される可能性はないという声が強い。特に、次世代自動車の方向性として、ハイブリッド自動車=エコカーが注目されているが、GMはこの流れに追随できないという見解が流されている。日本政府のエコ政策の一環で、エコカー購入に補助金が出されるとなり、軒並み関連自動車メーカーの株価が上がるという現象が一時出た。
■このまま株価は上がり続けるのだろうか思いきや、上がったエコカーメーカーの株価が急降下するなどしている。知人の説によると、いくら百数十万円の補助金が出ても、やはり最終的にユーザーは300万円の負担をすることになる。しかもエコカーは小型車が多い。小型車に300万円の値段は高い。確かに最初の何台かは捌けるだろうが、一般ユーザーにまで普及することはないだろうという。
■麻生政権の目玉政策として注目されたひとつに、ETC車の休日高速料金の値下げ策がある。一時品薄状態が伝えられたETC装置だが、もうそろそろピークも過ぎただろうと、ETC装置の搭載のため業者に行ってみると「半年から8ヶ月お待ち下さい」と言われた。いつになるかは分からないが申込みだけしてきた。事情を調べると、ETC装置を作る事業は各メーカーともリストラ中であることが判った。
■装置の取り付け業者によると、これほど人気の高い商品はないのに、品薄ではせっかくのビジネスチャンスもフイですよ、と嘆く。とは言え、メーカーの製造ラインでは従業員の解雇も含めて、事業の縮小方向でのリストラが行われていて、ますます今後は、ETC装置の品薄状態は続くようだ。この不景気の時代に、何とももったいない話だと思ったが、メーカーに聞くと必ずしもそうでもない。
■というのも今回の麻生政権の高速料金政策は2年間だけの時限政策であること。一旦ETC装置を付けたら、追加注文がないこと。車の生産台数は激減していることなどなど、ETC装置メーカーが事業縮小あるいは撤退をする理由がいっぱいある。しかも何と言っても、次期政権を民主党が取った場合、高速道路料金が撤廃され、無料になる可能性が高いことが最大の理由になっているようだ。
■企業が事業方針を決定する一番の理由がこうした外的要因だけだとは思わないが、モロ影響を受ける施策もある。しかし、政治的判断が働いたにもかかわらず、実際の社会活動、大仰に言えば国民の行動がついてこないことをETC問題は顕著に示している。指導者の見識が、国民の意識レベルに追いついていない、つまり指導力を失っている事例だと言ってもいいだろう。
■我がコンピュータ活用の世界でも今、指導力が強く求められている。特にシステム化の素材を提供する側のリーダーシップが失われてきているのが気にかかる。安直な「見える化」論が流行っているが、実は肝心な製品に商品としての意図が見えていないものが多すぎることを反映しているように見える。主役は使う側のユーザーニーズである。それがシステム化の原点である。謙虚に立ち戻って考えてみたい。(藤見)
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