はじめの言葉   2009年4月号より

                 はじめの言葉

■本誌が、情報処理および情報システム展開をする上での「原点回帰」を提唱し始めて数ヶ月であるが、様々な方々からのリアクションの多さに驚いている。曰く「足下から見直す姿勢は大事だ」「表面的なキャッチコピーに踊らされてきた」「自分のことは自分で考える、自社のことは自社で考えるべきだ」、また中には「マスコミのミスリードがあり過ぎたのではないか」というものも寄せられた。
■大手の全国紙からテレビ媒体にいたるまで我が国のマスコミは、広告スポンサーの意に沿うことだけを第一義として、現実的にはとてもありそうもないメッセージを読者、視聴者に送り込んできていたということか。同じ顧客ではあろうが、読者よりも広告スポンサーを大事にしてきている結果である。報道をする側も、原点に帰って考え直すべきだろう。確かに、顧客は広告スポンサーだけだと豪語している大手マスコミもあるのも事実だ。
■調査会社の発表資料にも、かなり怪しげなものもあるようだ。「結構な調査費用を払っているのですがね」と苦笑しながら、アテにならない調査結果が多いと告白するマーケティング担当者がいた。「ならば何故そんな調査レポートを購入するのか」と思うのだが、これこそ、ワラをも掴むという心境なのか。しかし調査会社は、担当者のそここそが付け目と狙い打ちしてきているのだ。
■サブプライムローンの世界的蔓延も、その端緒は「格付け会社のいい加減な格付けレポートだった」と指摘した関係者がいたが、同じようなものかもしれない。また証券アナリストから提供される上場企業レポートも、格付けレポートと同じくらいいい加減だと指摘する声がある。曰く「何のきっかけにしてでも、対象企業の株は上がるが結論なのが、アナリストたちのレポートなのだから」。
■要するに、ほとんど裏取りもされていない情報が提供されていたり、根拠もない情報が氾濫している証でもある。しかも、それが結構な値段で取引されているというのが、情報化時代の現実の顔でもあるのだ。要するに、受け取る側の問題、購入する側の責任だと言ってしまえばそれまでだが、正しい現況の把握よりも、端から買い手が喜びそうな情報集めが行われているだけとも言えそうだ。
■結局、こうした情報提供業者が各方面で活動できているのは、どういうことを意味しているのだろうか。情報セキュリティ問題が取り沙汰され、情報の盗聴、漏洩、改竄に対する防御策が論じられ始めた時、「もっと問題なのは、情報操作されることだ」と指摘してくれた知人がいるが、何のことはない、誤情報を掴まされ、誘導されていることを自ら望んでいる人間も結構存在しているということかもしれない。
■コンピュータ産業界は、大手のベンダー企業がこぞって大規模な人員整理を含めた社内改革に迫られている。経営革新のための情報戦略ツールを標榜し、売り付けてきた企業、産業としては、面目丸つぶれである。どんな施策をするにも、現状を正しく把握し、認識することが第一のスタートである。そのためには、端から耳障りのいい情報ばかりを選んで収集しているわけにはいかない。そのためにコンピュータシステムをどう使うべきか、自らが問われているコンピュータ業界である。(藤見)

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